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August 02, 2009

相反する気持ち

「世の中には本当に深刻な問題があって、そういうときは笑うしか術がないのだ。」

これは、第2次大戦中ユダヤ人迫害を逃れてアメリカに渡り、
自分の発表した理論が原子爆弾開発の根拠となったことから、
原爆投下阻止に奔走したが結局阻止できなかった、ノーベル物理学賞受賞者・ニールス・ボーアの言葉です。

ビトの拘置所での明るいスマイルは、自分の罪を死をもって償うと決意し、人間的高みに至ったからなのか、
それとも、上記のニールス・ボーアの言葉のように、あまりにも辛い自分の境遇に直面して、笑うしか術がなかったからなのか。。。
私にはその両方のような気がします。

でも最終回で、実はそのような立派な自分を維持するために、花に会うことを拒否し続けていたこと、
そしてその陰で、常に花を想い、ブタの折り紙に折り続け、恐怖の極みの中でその折り紙を握りしめて耐えていたことが明らかにされます。

私はそれが人間なんだと思います。
まったく反対のような感情が、同じ人間の中で同時に存在する。
どちらも本当の自分なんだけど、相反する気持ちを行ったり来たりする。

死刑を受け入れ、立派に死んでいくつもりだったのに、
花に会ったことで、花と共に生きたいという強い願望を痛感させられる。
それでも、微笑んでマーチンルーサーキングの”I have a dream”の切り抜きで最後のブタを折り、
花に、「大切なものは目に見えないのだから。僕がいないことを悲しまないでください。僕はいつもあなたの笑顔の中にいるから。」と手紙を残す。
自分を思い起こしてもらうための文字には、たくさんの辛い体験を通して必死の思いで獲得した深く高潔な部分を残すけど、
現実に死刑執行室に連れていかれるときは、号泣して崩れ落ち、自分の足で歩くこともできなくなる。

こういうビトの人間としての真の姿に強く強くひきつけられ、感動いたしました。

相反する感情を持つのが人間であり、その葛藤を、
死刑という究極の、そして誰もが避けたい設定の中で、
真正面から堂々と描いたことに、ドラマ『スマイル』の素晴らしさがあると思っています。

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